2015年2月27日金曜日

ぶなニュース №10

復刻版 ぶなニュース 第10号 2002年4月23日発行

○籠坂峠の大ブナ
 平成14年4月20日、日曜日。 まえから気になっていた籠坂峠の大ブナを訪ねることにした。気になっていたとは、まだ正確に幹周りを測っていなかったからである。当日天気は生憎霧雨の状態であったが、ブナ観察にはむしろ風情があって良い。家を12時頃出発。小山町から明神峠、三國峠を経由して、籠坂峠へ向かう。既に明神峠の道路の拡幅工事も終わり、工事中の看板もすべて撤去されていた。この峠道が開通したことで、10分程時間が短縮された。しかし、この工事により、何十本かのブナが伐採されたはずである。たった10分の短縮が大きな自然破壊につながったことは否めない。人間が数分の時間短縮や便利さを求めることにより、自然に大きなダメージを与えることになる。このことはよくよく考えなければならないと思う。
  籠坂峠の公園墓地に車を置き、大洞山方面に向かって歩き出す。どういう訳か自衛隊の車両がエンジンをかけたまま近くに駐車していた。なにかの訓練なのであろうか?
1キロぐらい緩やかな登山道を行くと突然左側に大ブナが現れる。ブナの場所は2メートルほど登山道よりも上がっているが、まず気が付かないということはない。それほど強烈に存在感をアピールしている。丁度腹も減ったので、ここで軽い食事をとることにした。大ブナを見ながらの弁当は、なんて贅沢だろう。この上ない幸せな気分にしてくれる。これもすべてブナの贈り物である。人間はブナに対し、何もしてあげることができない。しかし、愛でることはできる。
  このブナは蛸ブナなので根元から1メートルぐらいのところで、大きく四方八方に枝を広げている。メジャで測ったところ、340センチあったが、何故か4メートル以上の大きさに見える。貫禄十分だ。幹の裂け目からは水が染み出していて根元の苔を潤していた。また、2メートルぐらい上がった枝の平らな部分には着草植物がちゃっかりと間借りしていた。ブナは他の植物にも居場所を提供し、平然としている。何たる余裕だろう。人間もこうありたいものだ。
  私が納豆巻きを食べていると野鳥が飛んできて、私を見ている。ブナも見ている。なんだか気持ちが穏やかになり、何か自然と一体になった感覚になるから不思議だ。けして都会や人間社会では味わうことができない感覚だ。時間もゆったりと流れている。まるで異次元の世界に迷い込んでしまったかのようだ。素晴らしい時空である。
  今日の成果はここで十分堪能することができたが、まだ時間が少しあったので大洞山まで登ることにした。途中アザミ平を通過。 ここの富士アザミはまだ小さい葉を火山灰土から3,4枚覗かせていた程度である。アザミの季節はこれからだ。出番を静かに待っている感じだ。
  角取神社奥の院をお参りして、ユーターン。帰途につく。

ブナの左側に小さく小生のリックが見える。

神秘的な樹形、まさに籠坂峠の守護神だ。

存在感をアピールしているかのようだ。

他の植物がこのように寄生している。

幹の裂けめから水が染み出し、苔を潤す。


○水源にブナを植林
  南足柄市矢倉沢の金時ずい道の入口付近の広場で、4月20日、小学生や市民ボランティア計約80人がブナの苗木200本を植樹。南足柄市は「全国水の郷百選」に認定され、 1996年から毎年行われている。
 (平成14年4月23日付け神奈川新聞)