2024年9月13日金曜日

丹沢記

 丹沢記

下記の本は「丹沢記」 吉田喜久治 著 岳書房 1983年発行より

この本には興味深い記事が多い。特に「山名考」など。


目次
「丹沢記」吉田喜久治 著
国会図書館所蔵資料
以下同じ

419頁

山名考
コーゲ
1507mを熊笹、1420m、1320mを大コーゲ小コーゲと紹介したのは武田久吉。 (武田は蛭ヶ岳犬越路間はあるいていない)聞き書をもとに図上推断はとかく物議をかもすもととなる。坂本光雄は1507mを大コーゲ、1420mを小コーゲとした。あえて異名をとなえるからにはよりどころあってだろう。武田説に一言あっていいとこだが、タブーらしくふれてい ない。
コーゲに笄をあてる人、コーガイとルビふる人、東沢頭、東沢ノ丸、東沢尾根。野放図もいいかげんにしろといっておく。
大コーゲの名は古い。が、それがどこだか定かでないし、なんのことかもわからなかった。
箒沢の佐藤浅次郎に大コーゲとはヨーケ沢のツメの崖のことだときいた。二度目に念をおしたら、あいまいで歯切れがわるかった。 コーゲは崖ではなかろう。東沢本流、カル沢、ユイバシ沢にも、ほぼ同高度の所に崖はあるが その名はない。
1420mは1507mの一角でしかないが、1507mを熊笹とし、1420mに大コーゲ をあてれば、どうしたって1320mに小コーゲをはめたくなる。これすなわち図上談山の常套手段。
タイ、ハラ(ハラッパ、クサッパラ)と同類項というが、タイは岱、平とも書いているが、台 地とも関係がありそうだ。タイラのつまりも考えられる。草っ原とはかぎらぬし、森のタイもある。ハラには木のある所、ない所、まちまち。共に農耕無関係。
古い地名にその名の生じた大昔のことを無視して、今の状態で重ねどりは的が外れてしまう。地形はまだしても地物は変貌する。木森のところも伐りつくして、ほったらかせば荒野原。・・・


挿絵

大石山
右下にカヤマの平
諸子平
註、「カヤマの平」とは現在のユーシンロッジがある場所

表紙

奥付

左から小笄、大笄
用木沢からの眺め
2018年10月31日撮影