2015年4月22日水曜日

ぶなニュース №21

復刻版 ぶなニュース 第21号 2002年8月19日発行

○弓射塚のブナ
平成14年8月11日日曜日、富士山・弓射塚のブナを訪ねた。 弓射塚は精進口登山道の2合目付近にある。富士山の裾にコブのようにできた 小山で 標高は1566メートルである。
ブナ林はこの弓射塚から2合目までの登山道沿左右200メートル 幅ぐらいにある。我々は1合目の天神峠に車を置き出発。 当初、精進口登山道の進入ロが分からず30分ほど迷ってしまった。
 大室山同様この付近はどこも道標がないので、 うっかりすると獣道や廃道に迷い込む恐れがある。 この日も道に迷った二組の登山者に尋ねられたが、 こちらが聞きたいほどであった。 どうにか進入口も判明し、いよいよブナ探索を開始。 はじめのうちはブナもまばらであったが、弓射塚に近づくとともにブナが 多く現れてきた。しかし、スズタケが眺望とブナ林への進入を拒んでいて、 思うように近づくことができない。登山道から2.3メートル先のブナも スズタケが邪魔をして入り込むのに苦労。 やっと太目のブナが登山道近くにあったので、そのそばに行き、幹周りを計測。 320センチと、まあまあの大きさであった。
ここのブナ林はスズタケと富士スバルラインの影響で何となく元気がない。 立ち枯れたブナも多数見られた。環境の変化に敏感なブナはスバルラインからの 排気ガスで瀕死の状態なのだろう。 このままの状態では近い将来ここのブナは消滅するだろう。
 我々が帰ろうとするとき、登山道の上から雷のような音が近づいてきた。 見ると10台近いオフロード用のオートバイが車両進入禁止の登山道を下ってきたのである。無法にも通行禁止ゲートを乗り越えて侵入してきたのである。ライダーをよく見るといい大人達である。彼らも暴走族と変わりない行為をしている。開いた口が塞がらず、通り過ぎるのをただ呆然と見ていた。
 立ち枯れのブナとこのオートバイのお蔭で今回のブナ訪問はつまらないものになってしまった。 唯一の慰めは藪をかき分けて見上げた320センチのブナであった。

2合目の精進口登山道、平成14年8月11日撮影

320センチのブナ 平成14年8月11日撮影

○日本はどの国よりも自然をコンクリートで覆ってしまった
 日本の魅力の一つが多彩な海ですが、残念なことに海から見た景色は年々損なわれています。コンビナートとか醜い消波ブロックでね。湿地は埋め立てられ川もコンクリートで固めて自然を殺してしまっている。日本はどの国よりもたくさん自然をコンクリートで覆ってしまった。 どうしてそうなったか。大きな工事がなければ経済が成長しないという錯覚をつくったからではないか。自然をつぶして何でもカネで買えると思っていたら、そのカネが信用 されなくなったというのが、いまの日本でしょうか。
 作家C.W.ニコル氏
 平成14年8月12日付け日本経済新聞(夕刊)より。