2015年2月9日月曜日

復刻版 ぶなニュース№2

ぶなニュース  第2号 2002年1月.24日発行

○二度目の大洞山
  平成14年1月23日、日曜日の代替休暇で、ブナ山へ。天気は快晴。10時30分車で家を出発。駿東郡小山町を経由し、明神峠へ。明神峠と三國峠を結ぶ間道は現在一部の拡幅工事が行われている。その先は工事のため通行止めなので、なるべく三國山近くに車を止める。「この拡幅工事により何本かのブナが切られたのだろう・・」と思いながら工事現場を通過。
 三國山の登山口にとりつく。時間は11時50分。先日の雨と寒さで雪が残っていると予想していたが、まったくない。途中、猪の掘ったヌタ場に氷が張っていただけだ。
 200メートルも登るとお気に入りのブナの大木が迎えてくれる。すっかり葉を落とし、日差しが眩しい。木によっては枯葉をつけているブナもある。そう言えば箱根の三國山のブナも枯れた葉を残していたものが散見した。聞くところによると、この辺のブナは新芽まで葉を残し、芽吹くと同時に枯葉が落ちるようだ。
 三國山山頂着、12時20分、まだ腹が空かないので先を急ぐ。ヅナ峠で二人ずれの女性登山者に会う。こちらは単独行。今日初めて会う登山者だ、挨拶を交わしすれちがう。このヅナ峠は古くからの間道で武田信玄も北条との戦いで、ここを行軍したと説明板に書いてある。ヅナ峠は右に行くと山中湖に下る。あまり人が通らないので落ち葉で道筋がわかりずらい。次回はこの人が通らない間道を抜けてみたい。

武田信玄も行軍したヅナ峠

 大洞山に登る途中に道標があり、山頂が近くなったことがわかる。ここにも右に抜ける間道がある。 やはり人があまり通らないので、落ち葉が道筋を隠していた。近いうちこの山中湖に抜ける間道も歩いてみたいと思った。周辺のブナ林はどういう訳か倒木が多い。笹薮も徐々に侵食している。倒木の原因は火山灰と近くに富士スピードウエーがあるので、それらからの酸性雨だろうか?いずれにしても危機的状態にある。また、二人ずれの男性登山者に会う。ただ挨拶を交わし、すれ違う。今日行き会った登山者は全部で4人だった。静かで気分が良い。大洞山(またの名を角取山と呼ぶ)着14時10分。

岩田さん作の道しるべ

ここは通過し、お気に入りの場所である角取神社奥之院へ。奥之院と言っても大きな岩と小さな祠が二つあるだけの場所だ。岩の上には如何にも御神木にふさわしいブナが鎮座している。周辺には霊気が漂い周辺のブナがいかにも神域であることを演出している。ここに来ると修験者になった気持ちになるから不思議だ。祠に賽銭をあげ、お参りする。願い事は「またここに来られますよう。本年もよろしく」だ。祠の下の畳一畳ほどの窪みで昼食。その下は崖だ。眺めは素晴らしい。丁度正面に箱根の神山が望める。かすかだが大涌谷の蒸気も見える。
 昼食は、人参ジュースとサブレ、バナナ二本である。食事も修験者のように質素だ。神域周辺に少しあったビニール袋のゴミが気になり、拾う。神様が見ているので、気分が良い。今度来るときはゴミ袋を持参することを誓う。

角取神社奥の院、二つの祠。(セピア色に画像処理)

 14時50分帰路。同じ尾根道を折り返す。また往きと違った味わいがある。見る景色も違う。新しい発見もあるので、往復の山行の良いところだ。明神峠の道路拡幅工事は3月まで施工しているのでそれまでの間、山中湖に抜けることは出来ない。帰路、腹が減ったので、南足柄の行き付け蕎麦屋(相模庵)に寄る。店の時計を見ると16時50分。変な時間帯の夕食だ。途中、本屋にも立ち寄る。30分ほど「田舎暮らしの本」「ログハウス」「山野草」等を立ち読み、家には18時10分着。これで一週間のストレス解消、充電完了だ。

奥の院の御神木ブナ

○坪田和人さん推薦のブナ林
ブナ林は季節に応じて激しく変化している。また季節だけではなく、天候や時刻、その他動植物の存在などによっても大きく印象が異なる。その為、ブナ林を評価するのは難しい。それを承知の上で「ブナの山旅」「続・ブナの山旅」を通じて私が訪れたブナ林で私が高く評価したブナ林を「推薦するブナ林」として紹介してみた。

1.道南

☆賀老高原・・・・日本一のブナの蓄積量を持つ賀老高原。「樹海の森」、「太古の森」は平坦な大地に遊歩道が付けられていて誰でも見事なブナ林を楽しめる。

☆歌才ブナ林・・・日本でのブナが自生する北限の森。北限といえども見事なブナ林で遊歩道も付いている。

2.東北

☆白神山地・・・・ご存じ世界一の広大なブナ原生林を有することで世界自然遺産に登録された。この山地で見事なブナ原生林が見られるポイントは青森側では暗門の滝上の高倉森、天狗岳、十二湖から崩山。秋田県側では田代岳、藤里駒ケ岳、岳岱。特に岳岱は平坦地の岩の上に芽吹いた逞しい生き様が見事な森。

☆八甲田山地・・・十和田湖への109号線沿いにブナ林が見られるが、中でも見応え有るのは城ケ倉温泉下部、赤沼、蔦沼周辺、御鼻部山、滝の沢峠。特に滝の沢峠付近は平坦地に見事な大木がズラリ立ち並んだ森。

☆太平山・・・・・太平山はどの登山口からでもブナが見られるが原始性という意味では岩見三内コースが随一。

☆森吉山・・・・・かつてのブナの宝庫も伐採され見事なブナ林は少なくなった。初めてクマゲラの棲息が確認されて特別保護区に指定されたノロ川周辺が見事。森吉山からは遠いが垂天池沼は美しいブナの別天地。

☆和賀山地・・・・自然環境保全地区に指定されている和賀川周辺。白岩岳山麓には幹周り8.6m、小影山には8.1mの日本一、二のブナの巨木もある。

☆鬼首高原・・・・周辺のどの山もブナの宝庫。特に虎毛山から高松岳間、須金岳に見事なブナ原生林が残っている。

☆栗駒山地・・・・人気の山だが宮城側の世界谷地から湯浜温泉は鬱蒼とするブナの原生林の道。

☆鳥海山・・・・・かつてはブナの樹海であったがほとんど伐採された。その中で中島台には珍しいアガリコの奇形樹の森はブナ林の中では異様な感じの森。

☆月山・・・・・・月山周辺では旧六十里街道、姥ケ岳から月山荘への山道の森が素晴らしい。八久和ダム周辺も見事な森という情報があるが私は未だ訪れていない。

☆朝日連峰・・・・さすがは朝日連峰でブナの名所は多い。まず大鳥池周辺、奥三面、石黒山、猿田川流域、中ツル尾根、角楢平、桑住平、ヌルマタ沢など。

☆飯豊連峰・・・・飯豊連峰は山が険しく気象条件が厳しいためブナ大木が林立するブナ原生林は少ない。そのなかで見事な森と云えば十貫平、温身平と自然教育観察林に指定されている湯の島小屋くらい。

☆南会津・・・・・南会津のブナも多く伐採されてしまった。その中で見事な森と云えば浅草岳の沼の平がまず筆頭だろう。八十里越えの道を含めてこの一帯は大規模にブナ原生林が残っている数少ない場所。その他では志津倉岳、会津朝日岳、高陽山、日尊の倉山に良いブナ林がある。

3.東北以西

☆信州・・・・・・信州は山国ながら高い山が主体でブナが自生する標高は大概伐採など人手が入っている森が多い。そんな中で推薦箇所としては苗場山の小赤坂口、フクベ平、志賀高原のカヤノ平、奥裾花があげられる。

☆関東・・・・・・関東は各地にブナは散在しているが原生林といえるほどの森は残っていない。ブナ林として一定のレベルにある森としては玉原高原、丹沢・鍋割山くらいか。

☆白山山系・・・・北陸の山でブナ林といえば白山山系は欠かせない。原生林としては笈ケ岳への清水谷上部一帯、福井との県境の三谷川上流部のブナ林が人手は入ってなく特に良い。別山への千振尾根、富山側ではブナオ峠周辺、福井の刈込池周辺、岐阜側では大白川、三方崩山のブナ林も見事な森。

☆関西・・・・・・関西は古くから都として栄えたため多くの山は人手が入っていて自然林は少ない。ブナ林としては芦生の森、池木屋山が推薦できる森。

☆中国・・・・・・中国では何と云っても大山。中腹は周囲グルリブナ林で、しかも見事な森。その他では天然記念物となっている比婆山や恐羅漢山の台所平も見事な森。

4.誰でも簡単に訪れることが出来るブナ林
 以下の森はJR東日本発行の「トランヴェール」2000.6月号で写真入りで紹介したものです。

☆岳岱風景林・・・白神山地の藤里駒ケ岳山麓にあって、平坦な大地に岩がゴロゴロ転がっている。その岩を抱きかかえるようにしたブナ大木が林立した様子は見事の一言。林内には遊歩道が付けられ、案内板も随所にあるので誰でも白神山地のブナ林を探勝できる。

☆蔦温泉・・・・・八甲田山麓のブナ林に囲まれた温泉。建物も浴室も全てブナ材で作られている(ただし新しい浴室は桧作り)。温泉から蔦沼をはじめ蔦七沼巡りの遊歩道が付けられているので、ブナ林散策が楽しめる。